『en-taxi』AUTUMUN 2009 vol.27

en-taxi』の最新号2009年秋号が先日(9月30日)、発売されました。

en-taxi』とは不思議な縁があって、いつも親しみをもって、誌面を拝見しているのですが、今回は今まで以上に身内気分で目次を見ました。
それというのも、本誌(「Divagation」)にもご寄稿いただいた伊藤拓馬さんのコラムが「en-taxi's Column フワッ!&ガチッ!」に掲載されているからです(「ボロボロの勇者たち」)。掲載のお話はご本人からもお聞きしていたのですが(必要があって、メールを送ったら、脱稿直後というときもありました)、やはり、実際に誌面を見ると、感慨深いものがあります。連載「立川談志 名跡問答」が隣のページで、談志の写真と同じ見開きに名前が見えるのも『en-taxi』掲載という実感を誘います。
「社会人野球ウォッチャー」という肩書きどおり、今般の社会人野球の話題をさらりと概括していて、社会人野球への興味の有無にかかわらず、しっかりと読ませますし、社会人野球に対する慈しみにも似た愛が感じられます。

本誌第5号掲載のコラム「社会人へ愛をこめて」も同じく社会人野球の話題で、第80回都市対抗野球大会神奈川第一代表決定戦の三菱重工日産自動車の試合を素描したものです。こちらは掌篇ですが、熱戦の様子を切れ味よく描き出しています。


また、臼井風人さんの小説「a good loser」にも注目しました。臼井さんはこの作品が小説家デビューとなる方で、世の中にはまったく情報のない新人作家なのですが、私は前出の伊藤さんと同じく少なからず付き合いがあり、ある種の青春小説とも言える本作の草稿も何度か拝見したことがありました。その作品が色々な経緯があって、今回の『en-taxi』に掲載されたので、これまた感慨深いというか、とても喜ばしく思いました。
最初のページの改行のまったくない文字の凝縮には驚かされますが、ひるまずに読み始めれば、30ページ近い中篇も味わいのあるものとなるはずです。
実は臼井さんも本誌と関係のある方なのですが、それは今回は置いておくとして、新たな小説家の誕生を祝いたいと思います。

伊藤拓馬さん、臼井風人さん、お二人の今後の活躍に期待します。

「ウラゲツ☆ブログ」で「Divagation」第5号をご紹介いただきました。

本誌「Divagation」にて、第4号から連載対談(「人文書について、語りうること」)をさせていただいている月曜社の小林浩さんが書かれている月曜社の公式ブログ「ウラゲツ☆ブログ」の8月22日の記事で、「Divagation」第5号をご紹介いただきました。遅ればせながら、お礼申し上げます。

第5号掲載の連載第2回では「経済状況と出版社」と題して、昨年の金融恐慌以来、前景化してきた出版状況の変化挙動の実質を中心に「経済」という条件がどのように出版(社)に関係しているのかをお聞きしています。
こうした企業的な動向も現在は落ち着いていますが、今後、どのように展開していくのか、そこにおいて、出版は何をし得るかということもお話しています。

Divagation 第5号

目次

特集 翻訳者の使命

  • 持田睦「かすかに聞こえる「ノン」の響き」
  • 翻訳「象徴主義詩抄」

インタビュー

小説

  • 石原征爾「寛容な妻」
  • 内野直樹「あつもの」

エッセイ PENS〓E ABSOLUE

  • 米谷南海「コンカツは裏切らない。」
  • 石嶺絵理子「林に潜む肉食獣」
  • 三井果苗「BL〜女子的好き放題フィールド☆」

追悼特集 Adieu, mon ami.

  • 二澤弘子「切り取られた目 滝平二郎によせて」
  • 小峰正治「アラン・バシュングについて」

連載

  • 山本貴光「人文とは何か」第1回
  • 小林浩「人文書について、語りうること」第2回(聞き手=明石陽介)
  • 明石陽介「詩情の光源」第1回

レヴュー

コラム

  • 桂一朗「“コミカル”な人びと」
  • 山本周「顕微鏡とペンライト」
  • 伊藤拓馬「社会人へ愛をこめて」

2009年夏号/151ページ

雑誌彷徨

 二ヶ月もご無沙汰してしまいました。いきなりですが、今回はイベントの案内があります。

坪内祐三 雑誌彷徨」

日時:6月26日(金) 16時45分〜(16時30分開場、終了時刻は19時を予定)
会場:慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス イオタ11教室
(場所の詳細はこちらを参照)

慶應義塾大学福田和也研究会主催

上記の研究会(ゼミ)の授業の枠内で、坪内祐三さんをお招きして、ゲストレクチャーが開催されることになりました。

このゲストレクチャーでは、坪内さんが福田恒存や様々な人物との出会いを経て、編集者から文筆家になるまでの半生と現在の「雑誌不況」という状況から(時代精神としての)雑誌文化について、お話をお聞きする予定です。

参加費は無料ですが、教室の収容人数は約120名程度(研究会の学生が30名ほど)です、その点、ご了承ください。

ちなみに一見、文壇アウトローズでのイベントに見えますが、聞き手は学生が務めます。

遠いところになりますが、よろしければ、ご参加ください。お待ちしております。

第4号随感 その2

「ウラゲツ☆ブログ」にご紹介いただいてから、幾つか頒布のお問い合わせをいただいています。

既にご注文いただいた方には、準備出来次第、発送いたしますので、もうしばらく、お待ちください。

その代わりというわけではありませんが、「第4号随感」の続きを書きます。

今回の「人文書」特集では、「彼/彼女たちの本棚」と題して、蔵書に関するアンケートを行い、数人の大学生と編集部、それに、番外編として「哲学の劇場」主宰の山本貴光さんから回答をいただきました。

設問は、以下の三問をお聞きしました。

設問

  1. お持ちの本のなかで最もページ数の多いものは何でしょうか。(辞書、事典類を除く)
  2. お持ちの本のなかで最も価格の高いものは何でしょうか。(古書を含む)
  3. お持ちの本のなかで最も古い本は何でしょうか。(発行年度もお答えください)

少ないながらも、なかなか面白い回答が集まりました。もちろん、山本貴光さんの回答も力の入った大変、興味深いものとなっております(大学生の購買行動との違いが際立っています)。

このアンケートについては、雑誌とは別に、今後も蒐集し続けたいと思っています。

人文書」特集では、他に二篇のエセーと「幽霊たち」と題して、絶版多数の叢書を紹介しています(新潮社の「叢書 創造の小径」など)。

次回は二篇のエセーについて、ご紹介いたします。

「ウラゲツ☆ブログ」で「Divagation」第4号をご紹介いただきました。

月曜社のブログ「ウラゲツ☆ブログ」の4月4日の記事にて、「Divagation」第4号を表紙の写真入りでご紹介いただきました。

「ウラゲツ☆ブログ」の執筆者は第4号の「人文書」特集で対談をさせていただいた月曜社の小林浩さんです。
今回、小林さんにお話をお聞きしようと考えたのも、私が同ブログの読者だったことが大きいので、こうして本誌をご紹介いただくのは、対談が掲載されているためとはいえ、大変、光栄なことです。

小林さんとの対談では「人文書について、語りうること。」と題して、「人文書」という括弧をつけて言及されるような書物について、現在の出版状況や「読者」の問題から語り起こしています。この対談は今後も何回か連載される予定になっています。

編集者としての経験だけではなく、書店営業や在庫管理、出版に関係する様々な事情にもお詳しい小林さんと「人文書」という大問題を前に、対談がどのように展開していくのは、私自身も楽しみです。

ちなみに、第4号の対談では「人文書は売れなければ/読まなければいけないのか。」、「人文書、その読者」といったテーマが主な話題となっています。

第4号随感 その1

これまでに製作した四冊のなかでも、最新号に当たる第4号(2009年冬号)は、ひとつの契機として特別な位置を占めている。

第4号の製作を中心とした動きのなかで、このようにブログを作り、頒布の可能性を持ったことはもちろん、月曜社の小林浩さんと知己を得、対談を掲載することになり、また、以前より交流のあった「哲学の劇場」主宰の山本貴光さんにもアンケートにご協力いただいた。
人文書界隈では知らぬ者はいないと言われる(多分、それほど過言ではないでしょう)お二人のお力を得て、「人文書」特集を行なったことは幸甚というか、得がたいことでした。それでも、正直なところ、「人文書」という大きな(或いは、大袈裟な)問題に対して、十分なフォローが出来たかといえば、やはり、力不足もあり、看板が大きすぎた感も否めません。
とはいえ、二年という区切りにおいて、真面目に動いてみたことには、自分(編集長)としても、雑誌としても、それなりに意味のあったことだと感じています。
それだけではなく、真面目ということでは、一般的な意味での真面目な主題を久しぶりに取り扱ったこともこうした特別な印象や感興を強化していることも事実です。これまでは「人文書」のように一般に議論されている主題ではなく、あまり口の端に挙がらないような話題を取り上げてきたので、今回は少し意識的に真面目に振る舞っている面もあります。

それでは、なぜ、「人文書」が問題だったのか、それは本誌(「Divagation」)にとっては、タイミングと気分の問題でした。いつか取り組まなくてはいけない問題でしたし、真面目な構えを取るときには、拙劣の謗りを免れないとしても考える必要があった。どちらかといえば、最初から引き伸ばされていた主題に辿り着くまでに、一年半を要したというのが正確かもしれません。今でも、時期尚早だったような気はしていますが、私(編集長)の身辺状況を鑑みると、このタイミングを逃しては、実現できなかっただろうことも確かです。

あまりまとまりがありませんが、今後、特集の内容について、簡単に触れていく予定です。少し長めの編集後記というところでしょうか。

それと、既刊三冊の目次も少しずつご紹介していくことにします。ご興味があれば、ご覧ください。